シンポジウム会場の様子(ふくしん夢の音楽堂)

 この度、当法人の鈴木亮太(代表理事)と松永秀太(執筆者)は、日本生活科・総合的学習教育学会 第35回全国大会(福島大会)に参加してきました。大会は6月26日(金)〜28日(日)の3日間の開催でしたが、私たちは2日目からの参加でした。

 今年度の大会テーマは、「福島から子ども観、教師の在り方を問い直す〜カリキュラム・マネジメントの中核としての生活科・総合からの変革〜」という題で開催され、東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故から15年が経過した今、正解なき社会の問題を直視しながら、目の前の子どもたちの姿や背景をしっかりと捉え、学びの在り方を問い直そうとする思いが込められたテーマでした。

ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂)の入口

2日目の課題別研究会への参加

 2日目は主に課題別研究会に参加してきました。いくつか、テーマごとに分かれていた研究会でしたが、今回は、藤井千春先生(早稲田大学教授)がコメンテーター、岩本宏幸先生(創価大学)がコーディネーターを務められた、「探究実践における子どもの事実との出会いは、教師の『在り方』をいかに揺さぶり、既存の『子ども観・学び観』を問い直す契機となるのか」の研究会に参加してきました。

 その中でも、特に印象に残ったのが、会津若松市立謹教小学校の小学5年生の総合的な学習の時間で、伝統的工芸品のテーマを扱った実践発表でした。実践発表の際には、特にMさんという子どもの変容に着目しながら、ご発表をされていました。 当初、伝統工芸品をテーマにした教材に取り組んだMさんは、たまたま祖母が営んでいた下駄屋へ行き、手作業で作る職人さんの思いを学んできたそうです。Mさんは普段、勉強に自信が持てず、周囲の目を気にしてばかりで、自分の内面を出し切れない側面をもっていたそうですが、勇気を出して、祖母の下駄屋さんで作った本物の会津塗り下駄を学校に持って行ったそうです。その際、先生は、意図的に教室全体に聞こえる声で、「わー、本物を持ってきてくれたんだね!」とMさんの行動に対して、価値付けをされたそうです。これを聞いたクラスの仲間たちから、「すごい!」と歓声が上がり、クラスの仲間たちからの「すごい!」という声が、Mさんの小さなワクワクを確かな自信へと変えていったそうです。その後、Mさんは、会津の伝統工芸品の魅力を伝えるイベントのために、学校の用務員さんの手も借りながら、イベント用の「案内旗」などもMさん自身が提案をし、実際に作成されたそうです。イベントは大成功に思えましたが、イベントに参加した方からの事後アンケートを読んだMさんは、「魅力が伝わっていなかった」という現実に直面します。 仮に筆者だったら、落ち込んでしまいますが、Mさんは違い、「もっとできた、リベンジしたい!」と悔しがり、自主学習ノートに改善策をびっしりと書き込んだそうです。

 私は、この実践のご発表から、教師は子どもの些細な変化を見とり、褒めたり、時に「本当にそうかな?」と子どもの発見や気づきに対して意味づけをしたり、子どもたちに成功体験だけでなく、失敗することも経験させ、そこからどうすれば改善ができるだろうかという、方向づけをする役割が大事であることを学ぶことができました。

3日目のシンポジウム

 3日目のシンポジウムでは、田村学先生(文部科学省初等中等教育局主任視学官)をシンポジストに迎え、震災の経験に基づく実践や当時の悩み・葛藤を共有しながら、「質の高い探究的な学び」とは何かを明らかにし、次期学習指導要領を見据えた「生活科・総合」の重要性と教師の在り方について意見が交わされました。

シンポジウムの様子
シンポジウム登壇者の様子

 福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校の資料にも示されていたように、探究学習において教師は、子どもたちとともに正解のない多様な問いに熱中し取り組む「ジェネレーター(共創)」としての役割が重要であることを、改めて学ばせていただく大会となりました。

探究指導で求められる教師の指導性のスライド
探究的な学びの構造を示すスライド
カリキュラムマネジメントの中核としての生活科・総合のスライド

大会を通じて感じたこと

 今回、福島大会に参加し、学校現場の先生方や大学の先生、そして、福島大学の学生の方々とお会いする機会に恵まれました。2日間を通して強く感じたのは、生活科や総合的な学習の時間(探究の時間)を大切にしようとされている方々は、子どもたちへの愛情にあふれ、そして、ご自身も若々しいということです。  

 一方的に「教える」立場としてではなく、子どもたちと同じ目線に立ち、ともに学び続けようとする——そんな参加者の皆さんの姿勢から、大きな刺激をいただくことができた2日間となりました。

 また、個人的な感想になりますが、今回初めて福島県を訪れ、白河市の「南湖公園」の豊かな自然や、「ゆべし」や「柏屋薄皮饅頭」などの和菓子も堪能することができました。次回は、会津若松市や郡山市、いわき市にも行ってみたいと思う、2日間となりました。 ※(左下の写真:南湖公園にあるお団子屋さん「花月」/右下の写真:名勝「南湖公園」)

南湖公園近くの茶屋
白河市・南湖公園の湖畔の風景
 

文責:松永 秀太

▼ 大会概要
大会名 日本生活科・総合的学習教育学会 第35回全国大会(福島大会)
日時 2026年6月27日(土)〜28日(日)
会場(1日目) 福島大学
会場(2日目) ふくしん夢の音楽堂(福島市音楽堂)
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